困った事ほど助かる道(1)

 

 そのおたすけは、昭和二十五年のことでございました。

ある方から、一人の人間をおたすけして連れて来たいと思うから、先生、そのときは会長さんにお願いしてくださいと言われておりました。

そして、おたすけされた人間を連れて教会にまいりました。

 

そのおたすけにかかった事件というのは、昭和二十四年度の日本にとっては、当時三大事件と言われた。一つは東北の松川事件、もう一つは国鉄の下山総裁の事件。もう一つは福井の裁判所の焼き討ち事件。

その福井の裁判所の焼き討ち事件に関連したとして、警察に拘留をされた人間のおたすけが始まったわけでございます。

普通の方ではない、いわゆる暴力団の一員でございますね。当時は、ボツボツ、暴力団新法というような法律によって、そういう暴力団を封じ込めていこうという時代でございました。

まずお話が入ったのは母親からですね。本人は警察に拘留されているんですから、母親がね、お話を聞いて、もうすがるものなんにもない、神様会長様ということですがった。

そのおたすけをなさった方は、福井から日参をされたくらいですねえ。お教会の近くであれば、日参もたいしたことではございませんが、当時は、汽車も鈍行しかない時代ですから、大変なご苦労であったと思います。そのくらい熱心に、なんとかしてこの人間をたすけてあげたいという一生懸命のお気持ちだったと思います。

母親は母親で、近くの神様のあるお宅に日参をされた。日参をなさって、拘留されている警察へ差し入れに行くわけなの。そういう生活でございました。

 

本人が出てきてから申しますのに、愛町月報というのがお教会から出されておりますけれども、その愛町月報を差し入れした。

はじめは本人もたいしてそれに興味を示しませんでしたが、何気なくめくっているうちに、自分のような立場のヤクザな人間が、このお道の信仰によって更生をして助かった話が載っていたそうでございます。

ああ自分のような人間でも、こうやってたすけてもらえるのかなあと、そのとき思ったそうですねえ。それが、本人がお道に携わるはじまりでございました。

 

刑が決まるわけでございます。そのときに、裁判所の焼き討ち事件というのですけれども、自分たちはやっていない。やっていないことが、でっち上げによって、やっているということになった。

するとまた市民の中にも、何時頃、夜中にこんな格好をして歩いていたとか、いろんなデマがとんだんだそうですね。

けれど、そうして一網打尽に、暴力団の上のほうの連中が皆、警察に引っ張られていった。入れられた。

 

お母さんは、いよいよ公判によって刑が決まるというときに、初代の会長様のお写真を胸の中に納めて、会長さんお願いします、お願いしますということで、裁判所へ出かけて行ったんですねえ。

そうしてだんだんと刑の執行を決められて、いよいよ自分の息子になったときに、気がついたら椅子から降りて、地べたに土下座して、「会長さん会長さん」と言ってね、持っていた会長様のお写真を両手の中に挟んで、会長さん会長さんとお願いをしていた。

そうしましたら、初代の会長様がはたらいてくださったんですねえ。

裁判長が、「お前の母親は、名古屋にある愛町分教会という教会の信者だそうだけれども、お前は、ここを出たらそこへ行くか?」こう尋問をされたそうです。

自分は、そんなことはなんにも心に思っていなかったんですが、ふっと口から出た言葉は、「はい。行かせていただきます」という言葉が出た。自分でも不思議に思ったそうですねえ。

そのときお母さんは、会長様のお写真を両手の中に入れて、一生懸命拝んでいる。

結果において、執行猶予三年ということで、この青年だけ執行猶予三年、保釈金を積んで出ることができたんです。

 

いよいよ明日は出るということで、そのおたすけされた方とお母さんは、とにかく新しい衣類を持って、風呂敷包みに包んで、警察へまいりまして、出てきたところを家へ連れて行かなかった。

駅のトイレに行って、そこで全部、上から下から全部新しいものに取り替えさせて、そしてそのまんま家に帰らず、汽車に乗って愛町のお教会に参拝をされました。

そのときはじめて私は、その青年と面会をすることができたのでございます。

 

初代の会長様に、「こういう者でございますが、どうかひとつよろしくお願い致します」とお願いした。

ちょうどそのころお教会は、ただいまの神殿のご普請が始まっておりました。会長様がそのときおっしゃったお言葉は、今も私は忘れることができません。

「本来ならお前のような人間は、ここにおくことはできないんだけれども、僕に徳があるから大丈夫だよ。これからここにおいていただいて、僕と一緒に通らせてもらおう」こういうお言葉をいただきまして、お教会に長期ひのきしんとしておいていただいて、ご普請のお手間をさせていただくことになりました。                

 

(1)  以上

 

 

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